浅井コレクションについて

浅井コレクションの概要

浅井コレクションは、1897年(明治30年)の立ち上げ以来、120年以上の歴史を有する、日本有数の個人浮世絵コレクションである。
その膨大な数の浮世絵は、日本の歴史のあらゆる時代をカバーしているが、特に日本が最も元気で向上心に燃えていた、維新・明治期の時代の浮世絵・錦絵の保有量は日本の数あるコレクションの中でも最大規模である。
日本有数のコレクションは、日本の著名な歴史学者にも活用され、これまでに、東京大学の小西四郎名誉教授、大阪大学の時野谷勝名誉教授によって、日本の歴史、幕末明治を題材に、浅井コレクションの浮世絵を使った全集も刊行されている。
また、これまでに、京都の霊山歴史館をはじめとして、日本全国の博物館、美術館で浅井コレクション所蔵の浮世絵を題材として、数多くの展示会も催されており、現在でも日本各地の美術館で展示が継続されている。


浅井コレクションの成り立ち

浅井コレクションの草分けは、1897年ごろ、大阪で書店を経営していた浅井勇助が、浮世絵の収集を始めたことに遡る。
浅井勇助は、明治14年福井県武生市に生まれ、13歳のとき大阪に出て書店で奉公し、19歳で独立、「浅井泰山堂」を開いたが、書店経営の傍ら、失われゆく浮世絵の蒐集、保存と、その研究に努めた。
浮世絵のうち、多色刷りの版画を錦絵と呼ぶ。
明治時代は、歴史上日本が最も希望に溢れ、情熱的であった時代のひとつであった。
江戸時代の鎖国から脱し、西欧列強に追いつくべく、国を挙げて富国強兵、経済振興に努め、国全体が意気軒昂、著しい発展を遂げようと、活気に溢れていた時代であった。
この時代、浮世絵・錦絵は、今で言う、SNSのような情報伝達ツールの役割を負っていたが、急速に発展し変わりゆく時代の世相を反映し、非常に活気に溢れ、バラエティーに富んだ面白い内容のものが多い。
浅井勇助は、こうした希望に満ち、活気に溢れた幕末から明治期の錦絵に特に魅力を感じ、歴史的遺産として後世に残すべく、精力的に蒐集してきた。
1981年に浅井コレクションの錦絵のみを使って、「錦絵  日本の歴史」全4巻を刊行された時野谷勝大阪大学名誉教授は、その解説の中でこう記載している。
「公的機関などには、美術的見地から見ても質量ともに優れたものが多数存在する。しかし時期を幕末から明治に限ってみれば、浅井コレクションほど網羅的に蒐集しているものは、他に例がないと思われる。」